
みなさんは「ピサラディエール」を知っていますか? 日本ではあまりなじみがありませんが、ニースを中心に愛されているピザに似た郷土料理で、屋台や街角のパン屋さん、もちろん家でも作られる、アペロにも欠かせない定番の一品。今回は南仏のソウルフード「ピサラディエール」をどこよりも詳しくご紹介します!
「ピサラディエール」とは?

ピサラディエールは南仏プロヴァンス地方で愛されている伝統的な家庭料理。特に、地中海に面するフランス南東部、イタリア国境近くに位置するニースの最も古い名物料理の一つとして知られています。ピザに似た見た目で、別名「玉ネギのタルト」。
薄く伸ばしたパン生地に、じっくりと炒めて甘さを十分に引き出したタマネギ、アンチョビ、黒オリーブをトッピングしただけのシンプルさ。それでいて各素材の相乗効果は絶大! 飽きの来ない滋味深い味わいが魅力です。
「ピサラディエール」(pissaladière)の名前は「ピサラ」(pissalat)に由来しています。ピサラはニースの言葉で「塩漬けの魚」を意味する「ペイ サラ」(peis salat)から来ています。これはアンチョビのようなイワシのペーストで、ハーブ類で風味づけして熟成させたもの。魚醤のように発酵した風味が特徴です。
アラン・レイ著『フランス語歴史辞典』では、「ピサラディエールの名前の由来であるピサラはニース地域特有の単語で、ピザ(pizza)とは語源的な関連はないものの、音が似ているため混同されることがあります」と説明されています。
ピサラ自体の歴史は紀元 1 世紀にまでさかのぼるほど古くからあるもので、当時の価格は1リットルあたり1,500ユーロ(約255,000円)ほどと推定されている大変高価なものでした(1ユーロ=170円換算 ※2025年7月現在)。そのため、貴族階級のような家庭だけが手に入れることができる特権的な調味料だったようです。
現在、ピサラは海洋環境保護のための漁業規制で入手が難しくなってしまったため、アンチョビやアンチョビクリームで代用することが多くなりましたが、もともと地元の食材を使って作られてきたもの。黒オリーブには「カイエット」(caillettes)と呼ばれるニース産の黒オリーブを使うのが地元のこだわりです。
美食の街・ニースが全力保護!

ピサラディエールは、世界的に知られるニース風サラダ(la salade niçoise/salada nissarda)やラタトゥイユ(ratatouille)、フガス(fougasse)、ドーブ(daube)、ソッカ(socca)などと同じように、ニースが誇る伝統料理の一つです。
ニースでは、2014 年から郷土料理を保護するため、地元飲食店にニース料理「キュイジーヌ・ニッサルド」(Cuisine Nissarde)の認定制度を設けました。地元特産品の使用や食の安全性などに関わるさまざまな基準をクリアし、「キュイジーヌ・ニッサルド」マークを掲げるお店は「ここは本格的なニース料理を提供しています!」という太鼓判を押されたことになります。
人気のシェフや新しいレストランも積極的にその認定制度を取り入れたことで認定制度の認知度がアップし、地域の料理を文化財の一つとして大切にするニースの生活芸術の一部となっています。
「キュイジーヌ・ニッサルド」が認めるピサラディエールは、伝統的な製法を守っていることが必須。具体的には、玉ネギの炒め方、玉ネギの層の厚み、アンチョビの選び方、オリーブの種類など、細部にまで基準が設けられていて、「本物のピサラディエールには絶対にトマトが入っていてはならない」というようなこだわりも含まれます。
定義にない食材を使用した「インスパイア系ピサラディエール」もありますが、あくまで「ピサラディエール風」であり、ニース料理としてのピサラディエールとは別物という扱いです。ちなみに、厳格な基準を設けている「キュイジーヌ・ニッサルド」ラベルでも、ピサラではなくアンチョビを使ったピサラディエールはOK!
ニースに行く機会があれば、ぜひ“本物”のピサラディエールをぜひ味わってみてくださいね!
起源はイタリア?
ニースが誇る名物料理であるピサラディエールはニースで生まれたものでしょうか? 実は、その起源はお隣のイタリアにあったという説が濃厚です。
ニースは1860年まではサヴォイア家が治めるサルデーニャ王国領(イタリア側)で、リグーリア文化圏の一部だったことから、起源を共有する食文化があっても何ら不思議はありません。
ピサラディエールが影響を受けたのは、フランス国境に接するイタリア・リグーリア州の最もフランスに近い町、ヴェンティミリア(Ventimiglia)の「ピシャデッラ」(Pisciadella)、ボルディゲーラの「サルデナーラ」(Sardenaira)、リグーリア州都ジェノヴァの「ピシャランドレア」(Piscialandrea)、といくつかの説があります。
いずれもリグーリア州の町の料理で、町によって呼び名や微妙な配分の違いがあるだけで、内容的にはほぼ同じ。材料は、フォカッチャ風のパン生地+トマトソース+アンチョビやサーディン+オリーブ+ケッパー+ニンニク+ハーブ、といったところです。

ただ、トマトがリグーリアに伝わり、料理に使われるようになったのは18世紀以降といわれているので、もともとはトマトの入ってない「白いフォカッチャ(タマネギ+塩漬け魚)」だったと考えられ、それがニースで「pissalat(魚ペースト)」と玉ネギのタルト=ピサラディエールとして定着したという説も有力です。そう考えると、より伝統的な形で残っているのはニースのピサラディエールともいえるかもしれません。 「ピサラディエールにはトマトを使わない」というこだわりも、そういった歴史的背景を踏まえたものなのか、「ニース独自のもの」という主張の表れなのか…いずれにしても、ジェノヴァが起源といわれているニース名物「ソッカ」や「フガス」と同じように、ピサラディエールもリグーリアの一部だった時代からニースに根付き、家庭で代々受け継がれてきた料理といえそうです。
ただの名物料理にあらず! ニースっ子のソウルフード

ニースが大切に守る郷土料理の一つであるピサラディエール。ニースではどのように食べられているのでしょうか? その答えは「いつでも、どこでも」。
朝のマルシェで買って、その場でパクリ。パン屋さんやお惣菜屋さんでは、軽食やおやつにぴったりの定番の一品として、ガラスケースに四角くカットされたピサラディエールが並びます。「冷めてもおいしい」のがピサラディエールの特徴なので、温め直さずにそのまま常温で食べるのが基本です。
週末のビーチや丘の上のピクニックでは、焼きたてをカットしたピサラディエールが紙袋やタッパーに入って登場。ニースっ子のアペロのお供としても大定番です。細長い一口サイズにカットしてフィンガーフードにしたピサラディエールを冷やしたロゼワインと合わせて「地元の味で一杯」。白ワインやパスティスとも相性良しです。
「おばあちゃんが焼いてくれた味」「子どもの頃から親しんできた味」として、郷愁や家族の記憶と結びついたピサラディエールは、観光客用のおもてなし料理などではなく、どこまでも「自分たちの日常の味」。まさに心のふるさとなのです。
ア·ターブル!で楽しむピサラディエールの味

ア·ターブル!では、7月第1金曜日の記念日となった「アペロを楽しむ日」を祝して、2025年7月4日に「タルト・ソレイユ ピサラディエール風」を新発売しました。
ニースの定番アペロフードであるピサラディエールの味わいを、太陽を模したビジュアルの「タルト・ソレイユ」にアレンジ。指でつまんで食べられる気軽さは、カジュアルに楽しめるピサラディエール同様です。
丁寧にソテーして甘みを引き出したタマネギと、カラマタ産の黒オリーブ、アンチョビをパイ生地に包み、ピサラディエールのエッセンスをタルト・ソレイユで表現。良質な原材料を厳選し、アンチョビやゲランドの塩の程よい塩気にお酒が進みます。
冷やしたロゼワインと一緒に、「タルト・ソレイユ ピサラディエール風」で南仏気分のアペロをお楽しみください!
タルト・ソレイユ 特設ページ
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(参考)










