
フランスを代表する軽食「クロック・ムッシュ」。カフェテリア、カフェ、ブラッスリーからレストランまで、さまざまな場所で提供され、まさに老若男女に愛されている存在ですが、「名前だけは知っているけど、詳しくは知らない」という方も多いのではないでしょうか。今回はフランス人の食生活になくてはならない「クロック・ムッシュ」をどこよりも詳しく解説します!
「クロック・ムッシュ」とは?

クロック・ムッシュとは「バターで焼いた、あるいはグリルしたパン・ド・ミ(薄切りにしたサンドイッチ用の角食パン)2枚でハムを挟み、チーズを振りかけた料理」とされています。チーズはエメンタールかグリュイエールが使われることが多く、チーズは中に挟むスタイルも一般的です。簡単に言うと「パン・ド・ミで作ったハム(白ハム:Jambon blanc/Jambon de Paris)とチーズのホットサンドイッチ」。きわめてシンプルな料理です。
クロック・ムッシュ(Croque-Monsieur)は、「かりっと音を立ててかじる」を意味するcroquer と、紳士を表すmonsieurを組み合わせたユニークなネーミングです。当初は紳士が食べるような少し気取った軽食で、初期のクロック・ムッシュは「croque」の語感にふさわしいカリッ、サクッとした焼き上がりだったのかもしれません。
現在ではベシャメルソースを掛けた「グラタン仕立て」も多くみられます。ベシャメルソースは、クロック・ムッシュを名乗るための必須条件ではありませんが、お店などで提供されるクロック・ムッシュは多くがこのスタイルです。20世紀後半以降は「croque」が温かいトースト系サンドの総称のように使われはじめ、厳密に“カリッ”としていなくても違和感を持たれなくなってきたようです。
そんなクロック・ムッシュは、家庭で作られることはもちろん、フランスの学生食堂や街角のキオスクでも売られ、カフェやブラッスリーの定番メニューでもあり、ビストロやレストランにも登場することもあります。シーンを問わず「どこにでも当たり前にある」まさにフランスの味です。
フランス全土で愛されているクロック・ムッシュには、各地に根付いた多種多様なアレンジ版や進化系も存在します。「パン・ド・ミで作ったハムとチーズのホットサンドイッチ」というシンプルさが人々の創作意欲を刺激してきたのでしょう。忙しい時にパクっと食べられる軽食にも、お店でナイフとフォークを使って食べる一皿にもなる。
フランス人が大好きな味が一つに詰まっている上に、さまざまなアレンジを楽しむ懐の深さもある。それが、フランス人が愛してやまないクロック・ムッシュなのです。
パリのカフェから全国へ!?

今やフランスのカフェ文化の象徴のようなクロック・ムッシュですが、その起源ははっきりとしていません。ただ、古代ローマや中世に起源がさかのぼるようなフランスの伝統料理が多い中では、比較的新しい料理といえそうです。
その名前が最初に確認できる文献は、1891年にパリの『La Revue Athlétique』で連載されていた小説といわれています。クロック・ムッシュは1891年9月25日号の章でこんな風に登場しています。
“Il est tard et nous avons grand faim. Que faire pour le déjeuner ? Le jambon devient monotone à la longue. Le Diplomate qui est un peu gourmand, en quoi il ressemble à Talleyrand, a une idée. « Faisons des croque-monsieur ». Vite le pain à toast, le beurre, le fromage de gruyère, le jambon, un peu de poivre de Cayenne et à l’œuvre. L’un coupe, l’autre beurre, le troisième réunit le tout en sandwichs que Vincent fait sauter dans la poêle.
Ils sont exquis, les croque-monsieur. ”
もう遅いし、お腹もすいた。昼食はどうしよう? ハムは時間が経つと単調になる。タレーランに似ているという点で、ちょっと食いしん坊な外交官は思いついた。「クロック・ムッシュを作ろう」。早速、トースト用のパン、バター、グリュイエールチーズ、ハム、カイエンヌペッパーを少々。1人が切り、もう1人がバターを塗り、3人目がフライパンで焼く。
クロック・ムッシュは絶品だ。
簡単で最高においしい料理、といった雰囲気が伝わってきますね!
続いては、1893年5月17日発行の『Le Journal:Quotidien, Littéraire, Artistique et Politique』紙に掲載された記事で、「豪華なディナー」で提供される料理の一つとして紹介されたのが「クロック・ムッシュ・ベアルネーズ風」(Croque-Monsieur béarnaise)。ベアルネーズソースをかけたクロック・ムッシュと推測されます。ソースを掛けるスタイルが早くも生まれていることがわかります。
※ベアルネーズソースはフランス料理で使われるバターベースの温かいソースで、卵黄、エシャロット、白ワインビネガー、エストラゴンなどのハーブを使用。
1908年には、クロック・ムッシュは海を越えて、イギリスへ。現在もあるイギリスの高級日刊新聞『The Daily Telegraph』紙で、ロンドンにあるフランス料理学校のメニューとして登場していたそう。フランス料理の一つとして、イギリスでも知られていたことがわかります。
その後、パリのオペラ座近くにあった人気のビストロ「Bel Âge(ベル・アージュ)」を舞台にしたあまりにも有名なエピソードが誕生します。1910年、そのお店でバゲットが不足していたため、代わりにパン・ド・ミを使ってクロック・ムッシュを作ったところ、それが人気を博し、それが現在の「クロック・ムッシュ」の原型になった、といわれています。
「クロック・ムッシュ」の名前の由来として、そのお店でお客が「これは何の肉ですか?」と聞いたところ、Bel Âgeの店主は冗談で「これは“ムッシュ(男性)”の肉だよ」と答えたことが受け、それ以来このサンドイッチは「croque-monsieur(クロック・ムッシュ)」と呼ばれるようになった、というエピソードが語り継がれています。
面白いエピソードですが、この20年以上前からクロック・ムッシュは存在していたという説があることを考えると、これはクロック・ムッシュという名前にちなんだ冗談といえるかもしれません。それでも手軽なパン・ド・ミを使った新しいスタイルが人気を博したことで、このユニークなエピソードとともにクロック・ムッシュがさらに広く普及したきっかけになったのかもしれませんね。
進化系も多数! アレンジ自在なクロック・ムッシュ

パン・ド・ミでハムとチーズを挟んだクロック・ムッシュは、創作意欲旺盛なフランス人たちによってさまざまな進化を遂げています。
まず、一番有名なアレンジ系は「クロック・マダム」でしょう。これはクロック・ムッシュに目玉焼きを載せたもので、目玉焼きをマダムが被っていた帽子に見立て、「ムッシュ」との対比で「マダム」と呼ばれるようになりました。
多くのアレンジレシピが紹介されていますが、最近では、グリュイエールチーズの代わりにヴィーガンチーズ、ベシャメルの代わりにカシューナッツのクリーム、ジャンボン・ブラン(白ハム)の代わりにグリル野菜や「スモークトーフ」を挟むなど、ヴィーガンバージョンやベジ系クロックが人気です。
また、パンを米粉パンやそば粉パンに置き換えたグルテンフリー対応や、ケールやひよこ豆、レンズ豆のフムスを取り入れた栄養強化型クロックも注目されています。現代の健康志向や価値観を反映した最新形と言えるでしょう。
都市部では“グルメ・クロック”の提案も見られます。AOP指定のコンテチーズやシャラン鴨のハムを使ったリッチなバージョン、トリュフや黒にんにくソースを加えた創作系などが登場し、よりリッチな美味しさを追求する動きが広がっています。デザートにぴったりの“スイーツ・クロック”もあったりします。
観光客向けのレストランやカフェでは、手の込んだ“プレミアム・クロック”をメニューに加えるお店が増加中。洗練された盛りつけと味わいには、フランス人のクロック・ムッシュへの愛と誇りが詰まっています。フランスに行くことがあれば、ぜひ個性豊かなクロック・ムッシュの進化系を探してみてください。
地域色豊かなご当地クロック・ムッシュ

グルメ系やヘルシー系のクロックのほかにも、各地の特産を使ってアレンジした地方版のクロック・ムッシュも多種多様。地方の食として根付いている“ご当地クロック”をいくつかご紹介しましょう。
*ブレイズ・クロック(Breizh-Croque)
「ブレイズ(Breizh)」とは、ブルトン語(ブルターニュ地方のケルト系言語)で「ブルターニュ(Bretagne)」を意味する言葉です。フランス西部のブルターニュ風クロック・ムッシュは、パンの代わりにそば粉(blé noir)入りパンケーキや地元名物のガレット風の生地、具材にはブルターニュ産のハムやエメンタールチーズ、名産のリンゴなどを使うローカル色満点のアレンジです。シードルとの相性もぴったりでしょう。
*クロック・ムッシュ・ノルマン(Croque-Monsieur Normand/Croque-Normand)
ノルマンディーらしく、地元特産のリンゴのソテーをハムと一緒に挟んだり、チーズやソースには地元産のカマンベールチーズや生クリームを使ったりするアレンジが見られます。ブレイズ・クロック同様、ノルマンディーの特産品としても有名なシードルを合わせれば完璧ですね!
*クロック・ムッシュ・サヴォヤール(Croque-Monsieur Savoyard)
フランス南東部、スイスとイタリアの国境に接する位置するサヴォワ地方。北アルプスの山岳地帯のサヴォワ風クロック・ムッシュには、美食家ブリア・サヴァランが「チーズのプリンス」と絶賛したといわれているサヴォワ特産のボーフォールチーズやレブロションチーズ、最低でも6か月以上から12か月以上熟成されるサヴォワ伝統の生ハム(Jambon de Savoie)を使ったレシピが見られます。自慢のチーズをたっぷり堪能できそうです。
*クロック・バスク(Croque-Basque)
スペイン国境にまたがるバスク地方のクロック・ムッシュは、パン・ド・ミにバスクチョリソ(ピリ辛ソーセージ)やIGP認定の伝統の生ハム・バイヨンヌハム(Jambon de Bayonne)、特産の羊乳チーズ(fromages de brebis du pays Basque/ Pur brebis des Pyrénées)、グリルしたパプリカやトマト、調味料にバスクのサカリソースや唐辛子パウダーなどを使うなど、さまざまなレシピがあります。どれもバスクらしい個性的な味わいです。
地元の食文化に誇りを持ち、大切にしているフランスならではの地域色豊かなご当地クロック・ムッシュ。あなたの好きな地方にもご当地クロックがあるかも!?
ア·ターブル!で楽しむクロック・ムッシュの味

ア·ターブル!では、7月第1金曜日の記念日となった「アペロを楽しむ日」を祝して、2025年7月4日に「タルト・ソレイユ クロック・ムッシュ風」を新発売しました。
フランス人がこよなく愛するクロック・ムッシュの味わいを、太陽を模したビジュアルの「タルト・ソレイユ」にアレンジ。脂肪分45%の濃厚な北海産純生クリームを贅沢に使用したベシャメルソースに、クリーミーなコク、グリエールチーズのうま味、香りの良い白ハムの塩気が、ふっくらサクサクのパイ生地と相性抜群です。爽やかなグリーンペッパーをトッピングして、アペロにぴったりの上質な一品に仕上げました。
冷やした白ワインやロゼワインと一緒に、「タルト・ソレイユ クロック・ムッシュ風」でパリ気分のアペロをお楽しみください!
タルト・ソレイユ 特設ページ
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(参考)










