「オーガニック」「ビオディナミック」「自然派」の違いを知ればもっと楽しい! こだわりが進化するフランスワイン

美食の国フランスは、EU最大の農業大国であり、環境に配慮した農法に関する意識の高いオーガニック先進国でもあります。フランスの食文化の象徴の一つであるワインに関しても、より安全で、よりおいしく、よりサステナブルな製法への関心が高まっています。テロワールと結びついたワイン本来の在り方で品質の高さや個性を追求する小さなワイナリーも増えているフランスワインの世界を覗いてみましょう。

フランスはオーガニック先進国!

日本でもオーガニック(有機)野菜のコーナーを設けているスーパーも増えて来ましたが、フランスでは一般的。フランスでは、オーガニックを「ビオ」(BIO:biologiqueの略)と言い、ビオ専門店は珍しいものではありません。郊外の一般的なスーパーにも必ずビオコーナーがあり、品揃えも充実しています。

フランスでは、フランス農務省が認可する有機栽培(Agriculture Biologique・アグリキュルチュール ビオロジック)由来の製品に対して「ABマーク」と呼ばれるマークがつけられ、それが政府認定のBIO商品であることの証となっています。認定されるためには、「最低3年間は有機農法を実施していること」「オーガニック材料を95%以上含むこと」「EU圏内で生産あるいは加工されたものに限る」などの基準をクリアする必要があり、また一度認定を受けても1年ごとに抜き打ち検査が行われるという厳しいもの。生活者の意識も高く、多少割高でもビオ製品を選択する人が多いようです。

ワインに関しても、大量生産・長距離輸送を前提とした農薬や添加物の大量使用などに問題意識を持つ生産者が、より自然に近いサステナブルな製法でワインづくりに取り組むようになっています。

「ビオワイン」「ビオディナミックワイン」「自然派ワイン」の3タイプ

フランスで自然環境に配慮して造られているワインには、大別すると「ビオワイン」「ビオディナミックワイン」「自然派ワイン」の3つのタイプがあります。それぞれの違いを知り、ワインの産地や品種だけではなく、栽培法や製造法へのこだわりにも目を向けてワイン選びを楽しんでみてください。

1.有機栽培ブドウを使用した「ビオワイン」(vin biologique/vin bio)

ビオワインは、「ビオロジックワイン」の略。「オーガニックワイン」「有機ワイン」と同じ意味で、ビオロジック(有機)農法によるブドウから造られたワインを指します。フランスで公式に「ビオワイン」が認められたのは2012年と比較的最近のこと。栽培に農薬・化学肥料は一切不使用、遺伝子組み換えを行わない、認証を受けた有機肥料のみ使用可、有機栽培を3年以上続けている、などの基準をクリアしたブドウのみを使用します。現在は栽培法だけではなく醸造についても考慮され、醸造過程において添加物の投入量をできるだけ減らすことが推奨されるようになりました。ワインの品質を安定させるための脱酸化・還元、熱処理、タンニン、木材チップ、亜硫酸塩(二酸化硫黄)、工業用酵母などの添加は許可されています。

2. 生物多様性も守る「ビオディナミックワイン」(vin biodynamique)

ビオワインの考え方をさらに推し進めたものがビオディナミックワインです。ビオロジック農法をベースに、さらに天体や植物・生態系との関連性を取り入れた「ビオディナミ(biodynamie)農法」を行います。月の満ち欠けや星座が記された旧暦のカレンダーをもとに、収穫や瓶詰めといった作業工程のスケジュールが決められています。また、ブドウ畑の生物多様性を促進するために、肥料にはカモミールの花や牛糞といった天然由来の特殊な調剤を使用して土壌の活性化や生態系とのバランスを保っています。厳格な基準が定められてるビオロジック農法よりもさらに手間がかかった方法といえます。

土地の生態系を守るこの農法では、ブドウの木そのものが強くなり、味わいも力強く、その土地ならではの個性が感じられるものになるということで、多くのワイン生産者がこの農法によってワインの品質が大きく向上したと考えているそうです。ビオディナミックワインについて欧州の規制はありませんが、バイオダイナミックワインの生産を管理する重要な認証機関として、Demeter(デメーテル)とBiodyvin(ビオディヴァン)の2つがあります。

3.自然派ワイン(vin naturel/vin nature)

「自然派ワイン(ヴァンナチュール/ヴァンナチュレル)」という呼称を目にすることが増えましたが、フランスでは定義や認証機関がないのが現状です。各団体が独自の定義を適用していますが、一定の基準などはなく、各ワイナリーが独自の取り組みをしています。自然派ワインについては「亜硫酸塩を(ほとんど)添加しないワイン」という考え方があり、実際に添加物や亜硫酸塩を一切使用しないワインも存在します。

例えば、約50のワイン生産者が加盟している自然派ワイン協会(Association des Vins Naturels)では、「有機またはバイオダイナミック農法によるブドウの栽培」「手摘みによる収穫」「発酵には地域土着の酵母を使用(ブドウに自然に存在する酵母)」などの仕様を定めています。

赤ワインでの亜硫酸塩の使用に関する基準を見てみると、
・EU基準:亜硫酸塩160mg/リットル
・ビオワイン:亜硫酸塩100mg/リットル
・ビオディナミック(デメーテル):亜硫酸塩70mg/リットル
・自然派ワイン(自然派ワイン協会):亜硫酸塩30mg/リットル

自然派ワインの考え方の一つに、「亜硫酸塩の使用量をできる限り抑える(使用しない)」という考え方が見られます。ただ、亜硫酸塩には酸化スピードや雑菌の増殖を抑えるというワインの品質を安定・向上させるための大切な働きがあり、使用量を抑えるには高い技術が必要。技術力が伴わない場合はかえって低品質なワインになってしまうため、現在の自然派ワインは玉石混交とも言われています。

まだまだ進化中の自然派ワインですが、高い志と情熱をもって取り組むワイン生産者を支援する熱心なワイン愛好家が多いのもワイン文化に誇りをもつフランスならではと言えるかもしれませんね。

A TABLE!セレクトの自然派ワイン&シャンパーニュ

(参考)