フランスの春の一大イベント!子どもも大人もチョコを楽しむ「復活祭」

キリスト教徒にとっては、クリスマスに並ぶ大切なイベント「復活祭」。毎年4月にやってくる国民の祝日です。フランスでは、家族でごちそうを食べ、卵やウサギ、鐘、ニワトリの形をしたチョコレートを楽しむ習慣があります。今回はフランスの復活祭についてご紹介します。

家族が集まってごちそうを楽しむ祝日

「復活祭」は、英語で「イースター(Easter)」、フランス語で「パック(Pâques)」と言います。文字通り、十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが3日後に復活したことを記念した祝日。「マルディ・グラ」から40日間続いた断食期間「四旬節」の終わりを意味する復活祭は、春の到来を告げるイベントでもあります。

復活祭は、毎年「春分後の最初の満月の次の日曜」と決まっているため、毎年日程が変動します。2022年の復活祭は4月17日。翌日の月曜は「ランディ・ド・パック(Lundi de Pâques:復活祭の月曜)」といわれ、こちらも祝日になります。土曜から三連休をとる人も多く、故郷を離れている人の中には復活祭を家族と過ごすために帰省する人も珍しくありません。

クリスマスの挨拶は「メリークリスマス」にあたる「Joyeux Noël!(ジョワユ ノエル)」ですが、復活祭は「Joyeuses Pâques!(ジョワユーズ パック)」と声を掛け合います。また、クリスマスの伝統料理といえば七面鳥やフォアグラですが、復活祭では伝統的に子羊やラム肉を使った料理を食します。

子どもたちのお楽しみ「エッグハンティング」

復活祭といえば「卵」。復活祭の翌日のランディ・ド・パックには、家族でペイントを施したゆで卵や、卵・ウサギ・鐘の形をしたチョコレートを、大人が庭などに隠し、子どもたちがそれらを探す「エッグハンティング」を行います。フランス語では 「シャッス・オ・ズ(Chasses aux œufs:卵狩り)」といい、市町村などが開催する大がかりなイベントもあり、チョコレートを求めて森の中や公園、野原などを家族連れが数キロメートルにわたってハイキングをします。

もちろんフランス人は、大人もチョコレートが大好き。復活祭の時期が近づくと、パン屋さんやお菓子屋さんにはかわいらしい復活祭用のチョコレート菓子が並び、子どもたちはエッグハンティングに精を出し、大人たちはチョコレートを贈り合って復活祭を楽しむのです。

復活祭のシンボルいろいろ

復活祭にはさまざまなシンボルがあります。代表的なシンボルは、卵、ウサギ、鐘。それらシンボルの由来を見てみましょう。

1.卵

卵は、「世界の起源」「生命の再生」を象徴しています。実は、この時期に卵を贈り合う習慣は、キリスト教ができるずっと前から存在します。5,000年前のペルシャでは春になると豊穣と再生の象徴として鶏の卵を贈り合ったという言い伝えがあります。エジプト、古代ローマでも、生命の象徴として、春になると人々は卵を贈り合っていたとか。その習慣にキリスト教の行事としての色合いが加わったと言われています。

キリスト教における復活祭は、四旬節の終わりも意味します。四旬節は、イエス・キリストが荒野で40日間の断食を行ったことに由来し、キリスト教徒がイエスにならって断食・節制を行う習慣として受け継がれ、かつては非常に尊重されていました。

17世紀まで、四旬節の40日間は、キリスト教徒は肉や卵を食べることを控えることとされていました。しかし、飼っているニワトリは卵を産むのをやめません。その結果、四旬節の終わりには、家庭に何十個もの卵が溜まっていることになります。そこで人々は食べられない卵にペイントで装飾を施し、お互いにプレゼントし合って節制の期間が終わったことと併せてイエスの復活を祝ったのです。そのうち、卵を教区の司祭に祝福してもらってから子供たちに与えるという習慣が生まれました。

『Chocolat et son histoire(チョコレートとその歴史)』の著者であるÉlisabeth de Contensonによると、その習慣の起源は15世紀のアルザス地方にさかのぼるといいます。当時は鶏の卵に絵や装飾を施し、食べることを前提にした習慣として広がり、17世紀から18世紀にかけては、特に王侯貴族たちの間で、豪華な装飾を施した卵を贈ることがブームになりました。ルイ15世が愛人のデュ・バリー夫人に贈った大きな卵の中身がキューピッドの像だったというサプライズの逸話があるそうです。

2.鐘

紀元8世紀、キリストの最後の晩餐の日である聖木曜日から復活祭前日までの3日間、喪に服し、教会の鐘を鳴らさないという決まりができました。そこから、「再び鳴り始める鐘」は復活祭を表すシンボルとなりました。子供たちは、その3日間の間鐘を鳴らさない習慣について、「鐘はローマに行って教皇に祝福され、教皇の復活を祝うために日曜日にローマから教会に戻ってくる。鐘がその途中で集めた卵を、庭にまくのだ」と教えられます。そして復活祭に合わせて「鐘が戻ってきた」翌朝に、子供たちは「鐘が置いていった」卵(チョコレート)を探しに出かけるのです。ドイツに近いアルザスやスイスなど一部の地域では、鐘ではなくウサギが復活祭の卵を配りに来るという言い伝えがあります。

3.ウサギ

多産のウサギは、愛と豊穣、生命の象徴。古代ギリシャ人は、相手への気持ちの表明として、今でいうバラの花束のように、ウサギを贈ったそうです。幸福を呼ぶウサギのイメージと相まって、キリスト教では「復活祭を祝うためにウサギが卵を配る」というイメージが出来上がりました。それは18世紀のドイツの伝説「オスターハーゼ」に由来するものと言われています。復活祭に食べるものとしてチョコレートバニーブームを作ったチョコレートメーカーが、その伝説の生まれ故郷であるドイツの会社であったことは偶然ではなさそうですね。国や地域によっては、卵を運ぶのはウサギではなく、カッコウやコウノトリだったりします。

チョコレートを楽しむようになったきっかけは?

卵、ウサギ、鐘など復活祭のシンボルは、現在チョコレートという形で復活祭になくてはならないものです。しかし、チョコレートが発明されるまでの何世紀もの間、「イースターエッグ」はゆで卵に図柄や色をつけただけのものでした。それが18世紀なると「卵に穴を開けて中身を出し、空になった卵に液状にしたチョコレートを流し込む」というアイデアが生まれました。そして1830年代以降になると、カカオペーストの加工技術の進歩と、鉄製の型の出現と多様化で、さまざまな形状のチョコレートエッグが登場するようになり、そのうちウサギや鐘までチョコレートになっていき、「復活祭にはチョコレートを食べる」という習慣が定着しました。日本のバレンタインデーと同じく、企業が仕掛けたマーケティングの成功例といえるかもしれませんね(笑)。

日本ではクリスマスのような認知度はありませんが、フランスでは大変盛り上がる復活祭。みなさんもチョコレートを食べて、イベント気分を楽しんでみてはいかがですか?

(参考)