昔は貧しい人々の食べ物だった!? オマール海老と、ロブスター、伊勢海老の違いとは

高級食材の代名詞的存在であるオマール海老。ヨーロッパでは古くから知られていましたが、北米では貧しい人々の食べ物とされ、人気を誇るようになったのは19世紀以降と、比較的最近のこと。フランスでは特別なテーブルに欠かせないオマール海老についてご紹介します。

オマール海老は年を取らない!?

オマール海老は、「エビ目ザリガニ下目アカザエビ科ロブスター属」の海洋性甲殻類。「海老」という名前で、実際はザリガニの仲間です。大西洋のノルウェーから地中海近辺やアメリカ東海岸、アフリカ南岸、南大西洋のトリスタンダクーニャなどに生息しています。通常75センチくらいまで成長しますが、まれに1メートルを超えるものもいるのだとか。オマール海老は、内臓も含めて脱皮を繰り返すことで新しく生まれ変わるので「老いることがない」ため、理論上「不老不死」といわれています(実際は脱皮の度に殻が強固になっていくため、脱皮できない硬さにまでなれば死んでしまうがその前に捕獲されてしまうとか)。

低脂肪で、タンパク質、リン、亜鉛などのミネラル、ビタミンB12が豊富に含まれています。オスはメスより大きな爪を持っていますが、メスの方が肉厚で美味といわれます。フランスでは、ロブスターは生きたまま販売されることがほとんどです。

オマール海老とロブスターの違い

オマール海老と似たものにロブスターがあります。どのような違いがあるかというと、実は違いはありません!「オマール(homard)」はフランス語で、「ロブスター(lobster)」は英語での呼称というだけの違いです。ただ、産地で味わいは異なります。アメリカで獲れる「アメリカン·ロブスター」より、「ヨーロピアン·オマール」の方が、身が詰まっていて甘みとうまみが濃厚で上質とされています。また、ヨーロピアン・オマールの漁獲量は、アメリカン・ロブスターの10分の1ほどという希少性からも価格が高くなっています。

オマール海老と伊勢海老の違い

もう一つ似ているものに伊勢海老があります。日本で古くから食されている伊勢海老は、「エビ目・イセエビ下目・イセエビ科・イセエビ属」で、名前の通り、正真正銘の「エビ」。オマール海老はプリっとした弾力が特徴で、伊勢海老はオマール海老ほどの弾力はありませんが、口当たりがまろやかで濃厚なうまみがあり、生でも加熱しても楽しめます。オマール海老と伊勢海老の一目でわかる大きな違いは、大きなハサミの有無。ザリガニの仲間であるオマール海老には大きなハサミがありますが、エビである伊勢海老にハサミはありません。大型の甲殻類ということで似ているようなイメージがありますが、実際は見た目もだいぶ異なります。日本では、伊勢海老はオマール海老の約2倍ほどの価格と、さらに高価な食材となっています。

ブルターニュ産オマールは最高級の「青い宝石」

フランスの主要オマール海老の産地は、フランス北西部に位置し、イギリス海峡に面するブルターニュ地方とノルマンディー地方。特にブルターニュ産オマール「オマール・ブルトン(Homard Breton)」は、青褐色の殻の色が特徴で、「青いオマール」「青い宝石」と呼ばれるオマール海老の中でも最高峰のブランドです。身が引き締まっており、濃厚な甘みと繊細な味わいで知られています。漁業量が少ないため、フランス国内でも最高級食材として扱われ、他のオマール海老の倍以上もの値段が付くといわれますが、地元ブルターニュの市場の屋台や魚屋では格安で手に入ります。ブルターニュへ行くことがあれば、味わわない手はないですね!

アメリカではタダ同然の貧しい人々の食べ物だった!?

高級食材の代名詞となっているオマール海老(ロブスター)ですが、意外な歴史を持っています。アメリカでは、もともと「ロブスター」の地位は非常に低いものでした。17世紀にヨーロッパから初めてニューイングランドに人々が入植した頃、ロブスターは肥料や家畜への餌として使われており、「魚が捕れなかった最悪の場合」に食べるものでした。タダ同然の、貧困の象徴のような食べ物であり、「海のゴキブリ」(!)と呼ばれていたといいます。

アメリカ独立の混乱期に赤い軍服を着たイギリス兵は、革命派から「ロブスターバック」と呼ばれ、流行りの侮蔑語だったとか。ロブスターのおいしさを引き出すには、生きたままゆでて調理する必要があることを知らなかったのです。19世紀後半になって正しい調理の仕方が発見され、ロブスターが高級品としての地位を確立したのは第二次世界大戦後のこと。現在アメリカンロブスターは比較的手ごろな価格で出回っているものも多く、大衆的なレストランでも見かけることができます。

一方ヨーロッパでは、味の良さから古くから珍重され、中世からルネッサンス期にかけては薬効も認められ、17世紀以降はブルジョアの祝宴のテーブルに登場するようになりました。ヨーロピアン·オマールはその食味の良さや希少性から昔も今も特別なテーブルに供される美食の象徴であり、親しみやすいアメリカンロブスターに比べると、高い地位にあるといえます。

フランスの代表的なオマール海老料理

オマール海老は、グリル、ソース、コニャック風味のフランベ、リゾット、スフレ、サラダ、カルパッチョ、パスタなど、さまざまな料理に登場します。他の魚介類と同様、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類や、パッションフルーツ、マンゴーなどの南国フルーツとの相性も良く、前菜としても活躍。殻からはうま味のあるだしが取れるため、殻を香ばしく炒めて香味野菜等と一緒に煮込んでソースにも活用されています。

<オマール海老を使った代表的なフランス料理>

●オマール海老のビスク(bisque de homard)

「ビスク」は甲殻類でだしをとったクリームベースの滑らかで濃厚な味わいのスープ。オマール海老を殻のまま軽くソテーし、その後ワインや香味材料と共に煮込んで漉し、クリームを加えて仕上げます。

●オマール海老のテルミドール(homard Thermidor)

ベシャメルソース、すりおろしたチーズ、マスタードを添えたオマール海老のグリル料理。19世紀末に現在のフランス料理の基礎を築いたパリの偉大なシェフ、オーギュスト·エスコフィエが考案したもので、当時大ヒットした劇「テルミドール」に由来して名付けられました。

ほかにも、グラタンなど甲殻類を使う一般的なメニューにオマール海老を使えば、高級料理に早変わり。A TABLE!のアヒージョシリーズでは、プリっとした食感と濃厚なうま味を楽しめる大きなオマール海老と、北海道最北にある猿仏産の肉厚で甘いホタテをふんだんに使用した「オマール海老と猿仏産ホタテのアヒージョ」が人気ナンバーワン! レストランのメイン料理として登場してもおかしくない、本格的でぜいたくな味わいです。魚介のうまみの染み出たオイルも最後の一滴まで味わいたいおいしさ。ぜひ一度お試しください!

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(参考)